2023.01.14 知っておきたいジャガイモの病気7選|症状や発生原因について 春野菜 Share Tweet Hatena Pocket feedly Pin it RSS ジャガイモは初心者でも簡単に栽培できる野菜として家庭菜園でも人気の野菜です。しかし、簡単だからといって放置しておくと大変なことになってしまう可能性もあります。何故ならジャガイモは他の野菜と比較して病気や害虫に影響されやすい野菜で、病害虫に一度おかされると食い止めるのは非常に難しくなってしまいます。ジャガイモを栽培する前に発生原因や予防方法を知っておくことが非常に大切になります。今回はジャガイモ栽培で発生しやすい病気についてとその対処法をまとめてご紹介していきます じゃがいもに発生する病気7選 美味しいジャガイモを栽培するためには、病気の症状や原因を理解して、栽培する事が大切です。もし発生してしまった際には、適切な対策をとることが重要になります。 ここではジャガイモに発生しやすい病気を7種類に絞って解説していきたいと思います。病気の名前・特徴・発生原因・予防・対処法など詳しく解説していきたいと思います。 1.そうか病 そうか病にかかったじゃがいもの症状:病害虫・雑草の情報基地参照 「そうか病」はジャガイモ(馬鈴薯)の代表的な病害です。食味や収量への影響はほとんどありませんが、見た目が悪くなります。そうか病はジャガイモなどの根菜類に感染するものと、みかんなどの柑橘類に感染するものがありどちらも症状似ていますが、病原菌が異なり、予防や防除の方法も違います。ここではジャガイモに感染するそうか病について解説していきます。 そうか病の主な症状 そうか病は漢字で書くと「瘡痂病」と書き、瘡痂は”かさぶた”を意味します。その名の通り、ジャガイモの表皮にかさぶたのような病班が現れるのが特徴です。病班は凹凸がなく褐色で10ミリ前後のものが一般的ですが、中には中央が没落した大型の病班やクッション状に盛り上がる病班もよく見られます。 そうか病の発生原因 そうか病の病原菌は、「ストレプトマイセス属菌」という放線菌で、土壌の中で有機物を栄養源にしながらかなり長い期間生存します。菌を含む土が何かしらの事情により土壌に混入したり、種いもから持ち込まれるケースから伝染します。そうか病の多発原因として考えられるのは、・塊茎の形成期である・肥大初期の6月中旬から7月中旬の地温が20℃以上で乾燥した環境・ジャガイモの連作や根菜類ばかりの栽培による土壌中の菌の増殖・土壌Phが6.5以上でアルカリ性に傾いていること・未熟堆肥の施肥による土壌交換酸度の低下などに注意が必要です そうか病の予防と対処方法 そうか病を効果的に防除するために必要なことは大きく4つ分けられます。1.土壌Phを5.5以下に調整することです。そうか病は低Ph条件に弱く、土壌のPh値を低く調整することで増殖を抑制できます。2.無病種いもを使用する事です。最大の予防は圃場に病原菌を持ち込まないことであり、その為にも病気にかかっていない種いもを入手することが重要です。3.そうか病に強い「抵抗性品種」を植え付けましょう。ジャガイモの品種によってそうか病への抵抗性に違いがあることが世界的に確認されており、ユキラシャ、スノーマーチなどが抵抗性区分が強く、春を代表する「春あかり」も抵抗性区分は強い方です。4.イネ科やマメ科の作物や緑肥と輪作を行うことも予防になります。ジャガイモは連作や根菜類の偏った連作を続けていると、土壌に菌が繁殖し、感染しやすくなります。コンパニオンプランツを取り入れたりして連作障害などが起きないようにしましょう 2.軟腐病(なんぷびょう) じゃがいもの軟腐病:病害虫・雑草の情報基地参照 軟腐病(なんぷびょう)は葉や茎に発生する病気で、イモにも大きな影響が出ます。植物の病気の大半は「カビ」が原因ですが、軟腐病の原因は「細菌」です。軟腐病が発生すると細菌が繁殖し、養水分の通り道を塞ぐので地上部はしおれ、地際も腐って溶けたようになります。感染すると広がりやすい病気でもあるので知っておく必要のある病気でしょう。 軟腐病の主な症状 軟腐病は、はじめ土についた下葉に水浸状の軟腐病班が現れ、腐敗は主茎へと想像より早く広がっていきます。その後は上下に黒褐色の腐敗が進み、やがて空洞化して場合によっては枯死に至ってしまいます。新塊茎では最初、皮の部分に赤褐色の小斑点が生じ、高温多湿のもとで周囲が褐色の斑紋となるのが主な症状の特徴といえるでしょう。 軟腐病の発生原因 軟腐病は、フザリウム属菌という放線菌により引き起こされる病害です。発生の原因として考えられるのは、種いもに菌が付着していて土壌感染が広まるケースや土中の菌が根から侵入し発病するケースもあります。茎葉の発病は7~8月に高温多湿条件の時に多く、特に倒伏(とうふく)が見られる圃場では多発する可能性があります。抵抗品種であっても窒素質肥料の過多によっても発病を助長する。排水性の悪い圃場での雨水停滞などはさらに発生条件を助長するので注意が必要です。病原菌が活性する温度は25℃〜30℃ 軟腐病の予防と対処方法 薬剤を使用される方は、種子消毒を行い土壌消毒を行う、標準施肥量を守り、過繁茂(かはんも)・倒伏を防止するなどが挙げられます。発生してしまった場合は初期段階でいかに対応できたかが重要になるので迅速な対応が必要となります。農薬を使用しない場合は、種いもに病気がないか精査すると共に繁殖が確認された場合は、被害が拡大しないように疑わしい株を早期に撤去すること。圃場の排水性を良くするなど環境面で発症しないなど細心の注意が必要です。 3.モザイク病 じゃがいもに発生する病気_モザイク病 モザイク病はウィルスによって伝染する病気で、アブラムシやアザミウマ、コナジラミによってうつされます。主な被害部位は、花弁と葉で、ウィルスを媒介するアブラムシ、アザミウマ、コナジラミなど害虫の予防と退治をすることが大切になります。 モザイク病の主な症状と発生原因 モザイク病はアブラムシなどウィルスを持っている害虫がジャガイモの葉から吸汁するときに植物に感染し、発病した部位から分泌される汁液におよって周囲に被害が拡大します。発病すると葉にモザイク状の模様があらわれ、進行すると葉が萎縮してしまうのが主な症状でモザイク病は多くの野菜から発症する病気のため、近くで育てている作物からの伝染にも注意が必要です。 モザイク病の予防と対処方法 モザイク病のウィルスは薬剤などでは対処できないため、発症した葉を取り除くか、ウィルスを運ぶ害虫の駆除をして蔓延を防ぐしか方法がありません。有効な治療法がないため、発病前の防除が大切になってきます。マルチやトンネルによって、病気を媒介する害虫の飛来を防ぐとともに万が一病気の症状を見つけたらそれ以上広がらないように除去しましょう 4.青枯病(あおがれびょう) じょがいもの青枯病 青枯病の原因となる青枯病菌はRalstonia solanacearum(ラルストニア・ソラナセアラム)という細菌で、罹病植物中や土壌中に存在しています。青枯病菌は土壌中で数年生存できることが知られており、また地下1mの深さにも生息している為、防除法として一般的に用いられる土壌消毒や輪作では根絶させる事が難しい病原菌です。 青枯病の主な症状と発生原因 青枯病菌に感染したジャガイモは始めに葉の一部が日中にしおれ、夜間には回復するという症状が表れます。その後、株全体が緑色のまま急激にしおれて、最後には枯死してしまいます。発生原因は土壌中に生息している青枯病菌がジャガイモの根の傷口から侵入します。また、青枯病菌は罹病株にも生息しているので、病気になったジャガイモを処理や管理したハサミ等を介して、健康なジャガイモに病気を広げるので注意が必要です。ジャガイモに侵入した青枯病菌は維管束内で増殖し、道管を詰まらせて水の通りを悪くします。また、青枯病は地中温度も関係しており、地中の温度が20℃を超えると発病がはじまり、25℃〜37℃まで高まると症状が顕著になってきます。もし、青枯病の症状が不明な場合、市販されているイムノストリップなどを使って検査する方法もあるので試してみてもいいかもしれません 青枯病の予防と対処方法 青枯病に感染した株は早期に引き抜いて対処するしか方法がありません。青枯病菌は乾燥に弱いため、抜き取ったあとに十分に日に当てて乾燥させたり、菌が圃場に蔓延しないようにゴミ袋などに丁寧に処理して圃場の外に出し、燃やしたりするなどして処分する必要があります。青枯病は一度発生するとその後も同じ場所で繰り返し発生する恐れがあるので、連作は避けるようにしましょう。また、青枯病は水と一緒に移動するので、圃場の排水対策は重要な防除方法の一つと言えるでしょう。 5.疫病(えきびょう) ジャガイモの病気_疫病:病害虫・雑草の情報基地参照 伝染病のうち、急性で全体症状をていし、集団的に発生することを疫病(えきびょう)と呼びますが、農業上の疫病は、卵菌類のフィトフトラ属菌による病気のことを指し、ジャガイモにおいては主に葉や茎に発生し、進行するとイモにも被害を与える病気です。 じゃがいもの疫病症状:病害虫・雑草の情報基地参照 疫病の主な症状と発生原因 「葉が水にしめったように腐ってきた」「葉が黒っぽくなり株が萎れてきた」これらの症状が表れた際は疫病を疑いましょう。葉が溶けるように腐っていくのが症状のひとつで病班部は白いカビが生える事もあります。茶褐色から黒褐色に変色して腐っていきます。疫病はカビ菌(糸状菌)が原因で発生する病気でジャガイモは葉や茎だけに止まらず、イモにも甚大な被害をもたらす可能性があります。疫病は土壌から感染し、水分でさらに伝染するケースが多く、病原菌に感染したジャガイモが伝染源となり、雨水や水滴により気孔や表皮から侵入し、感染が拡大していきます。低温多湿を好む疫病は、梅雨時期や秋に発生しやすく、20℃前後の環境で発症しやすい病気です。また窒素過多が原因で軟弱に育つと感染しやすくなります。 疫病の予防と対処方法 疫病に効果的な防除としては圃場の管理で行う方法と「農薬」の使用で行う方法があります。農薬を使用しない防除法としては、植物残渣の処理や太陽熱消毒による土壌消毒が有効です。前作の植物や枯れた葉に疫病が付着している可能性があるので残渣を土壌に漉き込まず、圃場外に持ち出して処理するようにしましょう。ジャガイモは圃場に廃棄した種イモから感染が広がるケースが多いです。夏の暑い時期で晴天が続きそうな日を見計らって太陽消毒を行なっておくのも効果的な予防といえます。圃場にたっぷり灌水をおこなったあと、透明マルチをはってひと月ほど放置して消毒を行いましょう。 6.黒あざ病(くろあざびょう) じゃがいもの黒あざ病:病害虫・雑草の情報基地参照 ジャガイモの「黒あざ病」は、主に罹病した種イモ、土壌中のリゾクトニア菌によって引き起こされる重要病害です。病原菌がジャガイモ表面にも形成され、その症状が黒い”あざ”のように見えることから「黒あざ病」と呼ばれています。 黒あざ病の主な症状と発生原因 ジャガイモの幼茎に発生した黒あざ病:病害虫・雑草の情報基地参照 その名の通り黒い”あざ”のような斑点が塊茎に見えるのが症状の特徴ですが、新芽が生長する生育初期から発生します。萌芽後、幼茎が褐色から赤褐色で水浸状に腐敗していきます。発生原因は、種イモからの伝染と土壌伝染をしますが、一般的には種イモから伝染します。菌核付着した種イモを植え付けると菌糸が伸長し、幼茎やほふく枝を侵害します。幼茎の発病は地温が9℃〜27℃と幅広く、特に20℃前後で活発化します。植え付け後の地温が低かったり、多湿に経過して萌芽が遅れた時にも多発します。 黒あざ病の予防と対処方法 病気が蔓延しないように種イモに薬剤を使用して消毒することが多いが、農薬を使用しない場合、種イモは菌が付着していないものを使用すること、浴光育芽を行い、植え付け時には深植えを避けるようにしましょう。塊茎への菌核付着防止のため、茎葉枯死発見後は7日前後で収穫し、連作は避けるようにするのが良いです。 7.輪腐病(わぐされびょう) ジャガイモに発生した輪腐病:病害虫・雑草の情報基地参照 ジャガイモに発生する重要な病気の一つ。病原は細菌の一種クラビバクター・ミシガネンシス・セペドニカスClavibacter michiganensissubsp sepedonicusで、植物病原細菌では数少ないグラム陽性菌。第二次世界大戦後アメリカ駐留軍用のジャガイモとして輸入され、1950年代に全国各地で多発した病気で近年では稀な病気とされています 輪腐病の主な症状と発生原因 萌芽直後から6月中旬までに茎葉の色がだんだん薄くなり、葉が萎れて幼茎のまま枯死することがある。一般的な症状としては、最初に下葉が萎れ、しだいに上葉まで萎れてくる。葉に不明瞭な濃淡の班ができ、葉が内側に巻いて、黒褐色を呈する。罹患したジャガイモは内部の維管束部が黄色に変色する事が特徴で、地際の切断部を圧迫した際に乳白色汁液が溢れ出た場合は輪腐病に注意です。維管束部に菌を保有した種イモからの感染が唯一となり、土壌感染はしないです。切断した道具から健全なジャガイモに高確率で伝染する。グラム陽性菌は18℃〜24℃が生育適温で26℃以上では抑制される。 輪腐病の予防と対処方法 病気に適応した農薬は登録がないので対処法ではなく、予防をしっかりと行う必要があります。菌を保有していない種イモを使用する。罹患したジャガイモを切断した刃物や道具は必ず消毒して健全なジャガイモに感染が広がらないようにするなど種イモや罹患したジャガイモの扱いに注意をしましょう。 まとめ という事で今回はジャガイモの栽培で知っておきたい病気をいくつかまとめてご紹介しました。珍しい病気から頻繁に多発するものまで色々な病気がありましたが、栽培する野菜のことを知るのと同時にそれに付着する菌のことも理解しておく事が大切だと改めて感じました。日頃から栽培管理に使用する道具の手入れや消毒は勿論、葉の症状などをよくチェックしながら生育を見守っていきたいですね。ぜひ皆さんも参考に美味しいジャガイモを収穫してくださいね! 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